ピエール・バイヤール『読んでいない本について堂々と語る方法』書評
前から気になっていたが、初めて読んだ。
タイトルのキャッチーさとは裏腹に、かなりしっかりとしたテクスト論で、後半とかは消化不良感も否めない。
ただ、本を読むのではなく本を教養体系に位置付けること、本の内容は決して一意的ではないことは身にしみて理解した。
もっとたくさん本を読んでいこう、そんな気にさせられる本。
ー読書メモー
<序>
「読まずにコメントする」ということは、以下3つの規範の存在が原因で難しい
①読書義務
②通読義務
③「語るためには読んでなければいけない」義務
この規範の体系は、結果的に人々のうちに読書に関する偽善的態度を生み出した
また、「読んだ」と「読んでいない」の違いも実はかなり曖昧
<1章>
未読にも色々ある
全然読んだことのない本→全体の見晴らし=書物と書物の関係性さえ把握していれば語れるし、その見晴らし=共有図書館の把握こそが教養である
流し読みしたことがある本→上記の全体の見晴らしを掴むという姿勢を、一冊の本の中でとればよい
人から聞いたことがある本→これですら、共有図書館を把握しておけば詳細に語れる
読んだが忘れてしまった本→これも同様
<2章>
ある本を全く読んだことがなくても、皆の<内なる図書館>が異なるのでその本について大勢の前で語ることは可能
<内なる書物>に基づき、自分の経験と思想に引きつけて語るという手法もある
個々人の<内なる書物>はすべて異なり伝達不可能なので、作家の前で話すときは気を使う必要がある
また人はときに愛する人の前で、その人と<内なる書物>を一致させようとするが、そんなことはファンタジーの中でしか実現できない。
<3章>
心構え
・気後れしない
・自分の考えを押し付ける
・内容をでっち上げることすら可能
・自分自身について語ることでもある
<結び>
結局、自分で創造するということが大事